哲学の特質は、ソクラテスが哲学対話のさいに発した「~とは何か」という問い方によく現れています。あたりまえと思っていること(法、教育、医療、企業、また正義や美など)について、それが私たちにとってもつ意義をあらためて問いなおす。そして、自分たちの進む方向を定め直して共有することが、哲学の目指すものです。激変する社会のなかで企業の存在理由を問い直し、個人の人生や仕事の意義を問い直すことに、哲学は役立ちます。そして、<洞察力>、<課題設定能力>、<概念化能力>を養うことにつながります。
カント(1724-1804)は18世紀を代表する哲学者であり、著書『純粋理性批判』は哲学史上の最高の名著の1つとされています。そのポイントは、「どこかにあるはずの真理を知りたいという気持ちにいったんストップをかけて、私たちの認識じたいを問い直す必要がある」という、カント独自の発想にあります。
〈神は存在するのかどうか。宇宙の全体は・物質の根源はどうなっているのか。死後、魂はどうなるのか。そもそも人は何のために生きるのか〉--古代ギリシアだけでなく、古代のインドの人びともこのように問うてきました。
しかしカントは、「問いのなかには、だれもが納得できる答え(共通理解)に至るものもあるが、それが不可能な問いもある」と考えます。そして、上記の問いが決して共通理解へと至り得ないことを論証した著作こそ『純粋理性批判』なのです。
『純粋理性批判』は「認識論」の哲学として知られていますが、認識論を哲学の1分野として捉えるべきではありません。「真理をいきなり問うのではなく、認識の働きを問い直す必要がある」という、画期的な発想こそ学ぶべきものです。そしてこの発想を徹底してつきつめると、フッサール現象学が生まれてくるのです。
このセミナーでは、『純粋理性批判』について、
・カント哲学の画期的、創造的なところはどこか?
・カント哲学のどこが現象学につながったのか?
の2つに力点をおいて、進めていきます。
少人数のグループワークでその理解を確かめ、質問を出してもらい、それに答えるかたちで進めます。情報量を多くせず、重要な点について参加者が深い理解を得られることをめざします。
本ワークショップは、ZOOMを用いたオンラインセミナーです。
参加に必要なZOOMのURLは、参加費の事前振り込み確認後、開催前日までに登録のメールアドレスおよびメッセンジャーグループ宛にご連絡いたします。
よろしくお願いします。
9時5分スタート
最初の参加者のチェックイン(西先生のご紹介と参加者自己紹介)
講義1:近代哲学の難問(主客問題・物心問題)と自然科学(45分)
~なぜ自然科学は共通理解として成り立つのか~
グループ対話(15分)&質疑応答(25分)
講義2:概念的思考とアンチノミー (45分)
~概念を使うことで、答えが出る問い/出ない問い が見えてくる~
グループ対話(15分)&質疑応答(25分)
ランチ
(60分)
講義3:神に代わって〈社会〉が新たな生きる意味となる(40分)
~「目的の国」という理念~
グループ対話(15分)&質疑応答(25分)
講義4 :
カントからフッサール現象学へ(30分)
~物自体の存在すらも、意識の中で確信されている~
グループ対話(15分)&質疑応答(25分)
チェックアウト、全体を通しての質疑応答&ダイアログ
18時終了
個人参加費A(主催者招待の方) 40,000円(税込)
個人参加費B(一般参加者の方) 45,000円(税込)
法人参加費 49,000円
(税込)
※キャンセルポリシー
当日から3日前 100%
4日前から3週間前
70%
22日前から5週間前 40%
36 日前から10週間前 20%
9名 (申し込み者多数の場合は、若干名増やします)
最低催行人数 3名
『100分de名著テキスト カント「純粋理性批判」』西研著
(NHK出版)
*わかりにくい箇所があっても考え込まずに前進して最後まで目を通してきてください。
HRT 現象学研究会
http://www.infohrt.com/seminar/wc_f_new.html
西研(にしけん)
元東京医科大学哲学教室教授
1957年鹿児島県生まれ。哲学者。
東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了。京都精華大学助教授、和光大学教授を経て現職。
哲学を「1人ひとりが自分と世界との関係を深く考えるための技術」として再生することを目指してきた。また、コミュニティとケアの哲学的探究の活動も行っている。ヘーゲル、ニーチェ、フッサール、 ハイデガーなどドイツの哲学を主に研究するとともに、日本能率協会や企業の社員研修として、哲学対話の実践を行ってきた。
おもな著書に『哲学は対話する』(筑摩選書)、『哲学的思考
フッサール現象学の核心 (ちくま学芸文庫)、『ヘーゲル 自由と普遍性の哲学』(河出新書)、『まなびのきほん しあわせの哲学』、『NHK「100分de名著」ブックス
ニーチェ ツァラトゥストラ』、『NHK「100分de名著」ブックスルソー
エミール』『NHK100分de名著テキスト カント 純粋理性批判』、『別冊NHK100分de名著
西研 特別授業『ソクラテスの弁明』』(ともにNHK出版)。
共著として『現象学とは何か:
哲学と学問を刷新する』竹田青嗣・西研編著
(河出書房新社)、『超解読!はじめてのヘーゲル「精神現象学」』竹田青嗣、西研、『超解読! ヘーゲル「法の哲学」』竹田青嗣、西研著(ともに講談社現代新書)など。
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